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「ライトオタク」をめぐるブログ言説分析の試み —オタク文化の地図を描く—

2017年09月02日 15:05

キーワード:ライトオタク,言説分析,ニコニコ動画,ファッション的消費


Ⅰ はじめに

(1)問題の所在
 アニメ、マンガ、ゲーム、美少女フィギュアといったオタク文化の消費者層は今、微妙な変化をたどっている。その微妙な変化を表すのように登場したのが「ライトオタク」と名付けられた層だ。彼らはこれまでに指摘されてきた従来のオタク—アニメやマンガ、ゲーム、美少女フィギュアに没頭し、東京・秋葉原や大阪・日本橋で消費活動する人びと—とは異なり、その名のように「ライト」にオタク文化を消費しているという(和田,2007)。
 オタクたちの活動が1年で最も活発になるのが夏に開催される「コミックマーケット」(通称コミケ)であろう。2010年8月17〜19日の「コミックマーケット72」の総来場者数は約55万人であった(1)。過去最高の来場者数で、今年も外国人の姿が目立ったという。55万もの人々が日本のアニメやマンガ、フィギュア等のキャラクターグッズやコスプレに関心を寄せるなかで、2010年8月17日に、次のような記事がインターネット上に掲載された。

 今回も56万人と過去最高の来場者を記録し、ますます盛り上がるコミケだが、あるゲームメーカーの展示担当者は「人数は多いのだが、全体的に“薄く”なった気がする。コアなギャルゲーのグッズなどは売り上げがいまいち伸びきらない。オタクのライト化が進んでいるのでは」という声もある。不況に強いとされるエンターテインメント産業だが、コミケの企業ブースの動向で未来が占えるのだろうか(2)。(傍線は引用者による)



 従来「オタク」と呼ばれる人々は、「子ども文化に大人が耽る者として、軽蔑の対象」(田川,2009:73)であり、1980年代に起こった、幼女連続殺人事件をきっかけに、マスメディアなどから、「社会性がない」「子ども趣味から卒業できない」などという、ステレオタイプでマイナスなイメージを付与されてきたとされるが、近年はアニメやゲームのコンテンツ産業の発展、オタク青年の恋愛を描いた映画やドラマなどから、消費者としてのオタクが産業においてプラスのイメージをもたらし、マイナスイメージは徐々に払拭されつつあるといえる。そして、文化批評の場だけでなく、アカデミックな世界においても、社会学、とりわけ文化社会学を中心に「オタク学」や「オタク論」「オタク文化論」というような分野が形成されつつある。また、消費者としてだけでなく、海外の研究者も日本のオタクやオタク文化に関心を寄せているほか、日本人によるオタク研究の世界的な発信が行われている(Taneska,2009;Azuma,2009など)。
 そのような豊富なオタク研究に「ライトオタク」の動向が与える影響とはいかなるものだろうか。「ライトオタク」といわれる層は、従来のオタクとどう異なっているのだろうか。また、「ライトオタク」の登場の間に、オタク文化や言説にどのような変化があったのだろうか。

(2)本稿の目的と方法
 本稿では「ライトオタク」をめぐる言説について若干の分析をおこなう。本稿が言説分析を用いるのは、なぜ「ライトオタク」という言説が成立したのかを、現在と過去の言説を収集することで因果論的に説明することが可能だからである。言説分析において、ある言説は他の言説との相互作用によって成立し、社会の変化が反映されるものである(岡本,2008)。相田美穂が、オタクというカテゴリーが登場した1983年から2005年までの言説を分析し、その間に、明らかに言説の変化があったと論じたように(相田,2005)、オタク論あるいはオタク文化論において言説分析の手法はしばしば用いられており、歴史的な探求がなされているのである。
 ただし、相田が言説分析の題材として扱ったのは東浩紀や大塚英志、宮台真二などの文化社会批評家たちのものであったのに対し、本稿では文化批評誌『ユリイカ』2008年10月増刊号「総特集:初音ミク—ネットに舞い降りた天使」の対談における「超ライトオタク」に対する反応を契機としたブログ言説群を用いる(3)
 もう一つ、本稿が目指すのは、文化地理学におけるオタク研究のパースペクティヴを確立させ、オタク文化の地図を描くことにある。そもそも人文地理学におけるオタク研究の主流は、オタクの消費行動と秋葉原に代表される、オタク文化の地域ブランド的特徴を論じた経済地理学的考察(菊池,2008)や、近年見られる「聖地巡礼」をめぐる観光地理学的考察(山村,2009;岡本,2009;岡本,2010など)であり、文化地理学におけるオタク研究は個々のアニメやマンガ作品の分析を通した、間接的な研究がいくつかある程度である(佐々木,2009a;佐々木,2009b;佐々木,2010など)。
 文化地理学におけるオタク研究の可能性の一つとして、カルチュラル・スタディーズを受け入れた1980年代以降の文化地理学のパースペクティヴの一つ、文化唯物論の立場に立てば、テレビや雑誌、巨大電子掲示板、ブログなど様々な言説の衝突によって日々変化しつつあるオタク文化をダイナミックにとらえ、それがどのような人びとの政治的・経済的力関係によって生み出されて維持されてきたかを問うことが可能だろう(4)
 いずれにせよ「ライトオタク」への文化地理学的アプローチは、オタク文化の地図を描く一つの試みと位置づけても過言ではないだろう。
 次に、これまでのオタク言説を振り返ることで、オタクに関する過去の言説を取り上げたい。
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